2年前、初めてこの作品を観た日のことを今でも忘れられません。「このお話は、私たち『子どもいきいきプロジェクト』の気持ちそのものだ！」と胸が熱くなったのです。

　勤勉な「ねこのくに」の住人は、何不自由のない暮らしの中でも、言いようのないさびしさを抱えていました。そこに突然やってきた「見知らぬおきゃくさま」が、ねこたちに運んできたもの、それは、「うた」と「おどり」でした。初めて知った楽しさと共に、見知らぬ客人は、ねこたちのかけがえのない「友人」になります。

　私たち「子どもいきいきプロジェクト」が、結成から4年間、子どもたちにむけて続けてきた小さな活動のすべてが、食べるものや住む場所のように、「それ」がないと生きられないものではないけれど、「それ」があった方がずっとおもしろいでしょ！楽しいでしょ！幸せだよね、という気持ちから出発したものばかりでした。

　「福井の子どもたちと観たい！『子どもいきいきプロジェクト』でやりたい！」作品を見終えてすぐにそう思ったのですが、福井の普通のおばちゃん6人だけで東京からオペラを呼ぶなんて、さすがに今回ばかりは無謀な計画すぎると、なかなか決断できませんでした。でも、不思議なことに、私たちに無理なのではと思いながらも、集まって話せば話すほど「やっぱり観たいよね。」「文化会館がいっぱいになったらうれしいよね。」と夢は膨らむばかりでした。

　そんな私たちの無謀な夢の最初の仲間になってくれたのは、福井芸術・文化フォーラムさんでした。主催者として手を繋いでくれたフォーラムのみなさんに励まされながら、私たちは次に、「チケットは買わなくてもいいから、プーサになってください。」という不思議な呼びかけをしました。

　原作の絵本にちなんでスリランカの言葉でねこを意味する「プーサ」はチケット割引の特典会員であると同時に、「ねこのくにのおきゃくさま」開催を応援してくれる仲間という意味の会員です。口コミのプーサ登録会員はじわじわと増え、なんと1200人を超えました。たった6人のおばちゃんの無謀な夢は、いつのまにか1000人を超える人たちと一緒に抱える大きな夢に膨らんでいったのです。

　「プーサ」の先行割引販売開始の10月1日。「『プーサ』には登録してくれたけど、本当にチケットを買いに来てくれる人はどのくらいいるんだろう？」不安いっぱい半信半疑でフォーラム事務所で待っていた私たちが目にしたのは、うれしそうに次々にやってくる小さな子どもたちとお母さんの姿でした。「親子で楽しみにしています。」「お友達のお母さんに誘ってもらったんです。」「ぼくも『ねこのくに』に行くよ。」笑顔の列に、私たちは胸がいっぱいになりました。「やっぱり、この作品をやろうと決めてよかった。」そう思えた瞬間でもありました。

　私たちは、「ねこのくにのおきゃくさま」の公演チラシに「心に残る素敵な時間をクリスマスプレゼントとして、福井のいっぱいの子どもたちと、たくさんの大人たちに心をこめて贈ります。」と書きました。でも、プレゼントは受け取ってくれる人がいなければ渡せません。

　こんなにたくさんのみなさんが、私たちの気持ちを受け取ってくださり、今日この会場に足を運んでくださったこと、そのことが私たちには何より幸せなことです。

　みなさん、本日は本当にありがとうございました。一緒に楽しい、素敵な時間を過ごしましょうね。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　平成24年12月21日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　子どもいきいきプロジェクト

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